二人は持てる力を尽くして激しくぶつかり合った。
体格に勝る熱波を相手に善戦した越冬であったが、怒濤の投げ技連発に最後は起き上がることができなかった。
できるのは片膝をつきながら痛む首を抑え、熱波を睨むのみ。身体へのダメージは大きいが、まだまだ戦う心は折れてはいない。
熱波は越冬に歩み寄ると、手を差し出した。
越冬は差し出された手を暫く睨みつけた後、力強く手で叩き返し、転がりながらリングを降り、控え室へと向かった。
熱波は両腕を上げて雄叫びを上げた後、四方に向かって深く礼をした。
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インタビュースペース。
越冬「ありがとうございました!全力でぶつかりましたが、相手はとにかくでかくて、俺の攻撃が効いてたのかちょっとわかりません。でも、戦いは体格じゃなくて心の強さだと思ってます。俺の心がまだまだ弱いってことだと思いますので、また鍛練して、いっぱい試合して、自分を磨きたいと思います。そしたらまたチャレンジしたいかな?階級は違えど、師匠の生徒なんだなと感じる所も多かったし、うん、ライバルですね。一緒に頑張っていきますので、よろしくお願いします!」
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熱波「この体格差なので、自分が勝つのは当然の結果ッス。でも、苦戦しました。あんなに体格で押されて、何度も投げられて、それでも向かってくる気迫。アイツが言う心の強さで言えば、自分は負けてたかもしれないッス。もしかしたら、自分に足りてないものを教えるために、先生はこの試合を組んだのかもしれない……もっともっと経験を積む機会が、いまは欲しいッスね。どんどん揉まれて、心を強くして、トップを目指したいッス。今日は勉強になりました。同門同期のライバルとは、切磋琢磨してそれぞれの階級でトップになって、そしたらまた熱い戦いができるんじゃないかと思うッス。それまで頑張ります!ありがとうございました!」