Phantom.1 第二試合調整中

ある日の喫茶店

 

店内の一角に小柄な男と、座っていても恐らくは2mは越えるであろうと想像できる程の大男が向い合わせで座っている。小柄な男、と言っても向かいに座る男が大き過ぎてそう見えるだけであるが、ファントム・ヤマプロスマホでメールチェックをしていた。自主興行開催に向けて四方八方走り回り、既に会場やリングなどの設備は借りる算段をつけ、後は選手の手配をするだけというところまできていた。

 

ファントム「……よし。これでトルメンタファミリーの来日手続きもOKですね。さて、どうですか○○さん。私が主宰する興行で、試合に出ていただけませんか?」

 

○○「でもねぇ、僕は面白い試合なんてできないと思いますよ。身体が大きいのだけが取り柄だって言われてるんですから。大切な初興行でしょう?こんな僕がお客さんの前に立って良いのかなぁ」

 

ファントム「色々と気にし過ぎですよ。試合の方は御大ジュニアに任せておけば色々動いて盛り上げてくれるので大丈夫ですって。貴方は基本的に立っていてくれさえいればね、その存在感にお客さんは驚いて、圧倒されて、凄いものを見た!って喜んでくれるもんなんです。」

 

○○「そういうもんですかねぇ」

 

ファントム「そういうもんです。ダイダラボッチは縁起物の妖怪なんですから、いてくれるだけでありがたい存在なんですよ。初興行を縁起物で成功祈願したいって思いもあります。そういうわけですから、ね?お願いします!」

 

○○「本当はテクニカルな試合をやってみたいんですが、うーん、分かりました。僕は縁起物なんて柄じゃないですが、そこまで言うなら協力しますよ。いつもみたいに黒塗りで良いんですよね?」

 

ファントム「そうです、そうです。対戦相手側には私が入りますので、ちゃんとこちらからもサポートしますから。では、当日よろしくお願いします!」

 

 

大太郎坊の参戦が確定し、大男は店を出る。その後もファントム・ヤマプロはスマホと手帳を広げて忙しく連絡を取り続けている。

 

そして数時間後。

 

ファントム「よしよし、各種手配と対戦相手はこれで決まったとして、こちら側は私と忍者ツチグモで試合運びは安心でしょう。最後はもうひとつスパイスが欲しいところですが……おっ、メールが来ましたね。どれどれ……」

 

村山大伍

ーお久しぶりだね!

試合のブッキングありがとよ。ファントムさんの頼みなら断れないからさ、是非とも参戦したい所なんだけども、条件が二つあります。

①試合中は自由に行動させてもらいます。指示されるの苦手なんだわ。でも、俺が動けばお客さん盛り上げる自信あるからさ、任せてよ。

②野菜販売ブースをテーブル2つ分設けてください。分かってると思うけど、俺ら本業農家だからさ。そっちでも売り上げ出さないとかーちゃんに怒られるわけ。

そこんとこ、よろしく検討頼んます。ー

 

ファントム「……うーん、何か荒れそうだなぁ。試合中も後も自由にやるつもりだろうし。まあその分この人は安く呼べるから助かるんですよね。新人同士の試合の後は会場の雰囲気を徐々に暖めて、盛り上げないといけないですからね。白菜も着ぐるみみたいだから掴みも悪くないはず。あと、あの人多分凶器も持ってくるだろうけど、それもまあ、何とかなるでしょう。返信、っと。」

 

Phantom.1の第二試合は、会場の雰囲気を盛り上げるメンバーを揃えることになった。

巨漢である大太郎坊の存在感で客の目を釘付けにし、メキシコのルチャリブレで親子タッグとして人気のあるトルメンタファミリーの二人が激しく動き回ることで更に盛り上げる。

対するは本業は農家で、白菜の着ぐるみを身にまとうハードコアファイター白菜之介。着ぐるみ姿で子供の心を掴みつつ、凶器攻撃で大人に刺激を提供する。そんなとっ散らかったリング上を、ファントム・ヤマプロと、本業忍者のツチグモがまとめ……まとまるんだろうか……

 

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