ライバル対決

ヤマプロ事務所には新たに所属した二名が来所していた。

葛西琢磨行徳恭二。学生時代からライバル関係にあった二人だ。

 

ファントム「二人とも来てくれてありがとうございます。これでジュニア戦線は活発になりますね。」

 

葛西「いいんすよ。俺はもっと激しく行徳とやり合いたかったんで、そんな場を提供してくれるんなら何時でもついていきますって。」

 

行徳「俺は別に相手は誰でもいい。所属することで戦いに専念できるというなら、これからもお願いしたい。」

 

葛西「なに~!?俺達ライバルじゃねぇかよ~!タッグだってなかなかいい感じじゃんかよ。なんでそんなすかしてんだよぉ」

 

行徳「昔からライバルだって言ってるのはお前だけだ。俺は激しくやり合える相手なら拘りはない。タッグだってオファーがあるから組んでいるだけだ。」

 

葛西「そんな水臭いこと言うなよ~!俺達結構人気あるんだぜ?」

 

行徳「そんなことに興味はない。俺は俺の戦いをするだけだ。」

 

ファントム「まあまあ。私は貴方達の因縁の対決が見れることに期待してますので……」

 

「随分と仲良しじゃねーかよぉ」

 

事務所の奥にある机に突っ伏していた男が、会話に割り込んできた。彼は妙典新総合格闘技からプロレスに転向してきたが、業界内では評判が悪く、オファーが全然来ないため、ヤマプロを訪ねて来ていたところであった。

 

妙典「何かこんなに仲良しじゃ、因縁の対決ってのもフェイクっぽいよね。そこんとこどうなの?」

 

行徳「誰だお前は?部外者は黙ってろ。」

 

葛西「そうだ、そうだ!俺達の熱いライバル対決を邪魔すんな!」

 

妙典「特にお前だよ。お前みたいなのがまとわりついてるから、仲良しごっこになっちまうんじゃねえの?」

 

葛西「なんだとー!ふざけたこと言いやがって!だったら俺と戦ってみるか!?」

 

妙典「いや、俺はこっちの奴に興味がある。お前、激しい戦いがやりたいんだってな。じゃあさ、俺とやれよ。俺は強すぎてみんな逃げ出していくんだ。戦ってくれる奴を探しに来てたんだよ。まあ、フェイクしかできねぇんなら、無理しない方が身のためだけどな。」

 

行徳「随分自信家なんだな。良いだろう。激しくやり合える強者なら拒む理由はない。お前の望む試合形式で相手になってやるよ。」

 

葛西「待て待て、お前ら。勝手に決めるな。おい、もじゃもじゃ頭!俺はお前が気に入らないって言ってんだ。強すぎるんだか何だか知らないが、俺はお前のこと全然知らないぜ。所詮どこの馬の骨なんだってんだよ。フェイクとか何だとかくだらないこと言ってんなら俺がはっ倒してやっから黙って相手しろってんだ!」

 

妙典「何だと?お前なんて秒殺だって言ってんだよ。何なら今ここでやってやろうか?」

 

ファントム「待った待った!皆さん血の気が多過ぎますよ。戦うならリングでしょう?証人は大勢の方が良いに決まってます。」

 

行徳「おい、俺は譲る気は無いぞ。このもじゃもじゃは俺が倒す。」

 

葛西「ちょっとちょっと!お前ももじゃもじゃも俺がやってやるんだって!」

 

妙典「人の事をもじゃもじゃもじゃもじゃ言うな!ぶっ殺すぞ!」

 

ファントム「よし。では、三つ巴戦なんてどうですか?ちょうどさっきどんな試合形式でも良いって話も出てましたし。」

 

妙典「良いね!テメェらに現実ってモンを見せてやっから覚悟しとけ。何なら仲良くタッグ組んだって構わないんだぜ。」

 

行徳「お前など一人で十分だ。俺はとにかく全力で潰すだけだ。」

 

葛西「えー!俺は一人ずつの方が集中できて好きだけどな。まあ面白そうだから二人まとめて熱く燃え上がらせてやるってよ!」

 

こうしてセミファイナルは熱いジュニア選手達の三つ巴戦に決定した。

行徳、妙典と格闘技色の強い二人に葛西がどう絡んでいくか?

大会は成功するかもと確信し始めたファントム・ヤマプロであった。

 

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