Phantom.1 メインイベント 信道 & ノーマン vs パウロ & ニック

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怪物と呼ばれる男、信道進に相対するは眠らない男、パウロ・マルティネス。二人は持てる力を駆使して暴れ回る。パワフルな技が飛び出す度に観客からは驚きの声と歓声が上がった。

ノーマン・オブスキュラもテクニックで存分に存在感を示したが、体格に勝る相手には力及ばず、最後はフォールを許してしまった。

ノーマンを完璧なジャーマンスープレックスで捉えたのは、ニック・エリオットであった。会場の盛り上がりは最高潮のまま終幕を迎え、イベントは大成功となったのであった。

 

 

ファントム「お疲れ様でした。今日は参戦してくれてありがとうございます。」

 

ニック「俺は仕事をしただけさ。試合を盛り上げたのは他の奴等で、俺は美味しいところを貰っただけだよ。」

 

ファントム「やはり、貴方は実力者でしたね。日本のオーディエンスは今後の貴方に注目するでしょう。」

 

ニック「いや、俺はあの信道とかいう日本人にいいようにやられた。まずは奴を叩き潰さないと気が済まないな。」

 

ファントム「勝ちブックを用意しろ、とは言わないんですね。何度かチャンスはあったのに負けブックも飲まなかった。」

 

ニック「ああ、あれはもういい。お前が好きなジャズの面白さが俺にも分かってきた。俺はアメリカで予定調和の試合しかしてこなかったから、ジャズの良さは分かってなかった。」

 

ファントム「いや、貴方はそんなこと言う人ではありません。何か違うことを思いついたのでしょう?」

 

ニック「ハッハッハッ!お前を惑わすのは簡単では無いな。まあでも面白かったのは嘘じゃないさ。そして負けるのは面白く無かったというのもある。」

 

ファントム「それで?これからどうするんです?」

 

ニック「なあ、このメンツを揃えてこの規模の会場じゃ赤字だろう?俺には分かるぜ。お前はやはり金勘定に甘い。これじゃどのみちお前は借金を抱えるだろう。」

 

ファントム「……さすが、ただの御曹司じゃないってワケですね。」

 

ニック「俺が少し出資してやるから、次からはもっと大きな会場で開催しろ。色々とやりくりしてるんだろうが、こんなんじゃ継続できねぇ。あの野菜ブースもやめて、ちゃんとしたグッズを売れ。付き合いだけでやれるほど商売は甘くない。本気でやる気があるならな。」

 

ファントム「……で?条件は?」

 

ニック「話が早くて助かるぜ。なあに、話は簡単だ。俺をマッチメイクに噛ませろ。」

 

ファントム「貴方、日本人に宛なんかないでしょう?開催は日本ですから、日本人は必須です。それに、ブックは基本的には無しですよ。」

 

ニック「いやいや、俺の試合だけでいい。勿論ブックも無しでいい。その代わり毎回セミかメインだ。ただ、俺の試合は俺のやりたい相手を、仲間は俺の用意するメンツでやらせてもらう。ああ、今日の相方は良かったな。あのパウロとかいうアルゼンチン野郎とは仲良くさせてもらうとしよう。」

 

ファントム「ちょっ、ちょっと待って下さい!そんな勝手なことばかり言って……」

 

ニック「他に選択肢があるのか?お前はフリーランスとしての活動だけでなく、このイベントを続けていかなくてはならない理由があるんだろう?なら、今度はお前が選ぶんだ。お前の判断に、委ねるよ。」

 

ファントム「……良いでしょう。貴方の遊びに付き合いましょう。貴方は出資した金でメインの権利を買ってるんですから、売上からの分け前は無しで良いですよね?」

 

ニック「ああ、いいよ。出場分のギャラは貰うが、俺が日本で試合するのは宣伝のためだ。俺が目立つように利用できれば、それでいい。ブックが無いから、お前もどんな展開になるか分からない。純粋に驚くことができて楽しみじゃないか。」

 

ファントム「ええ、そうですね。せいぜい楽しみにさせてもらいますよ。」

 

無事にイベントを成功させたファントム・ヤマプロ。しかし、思わぬ負債を抱え込む結果となってしまった。これからヤマプロの運営はどうなってしまうのか?それは次回のイベントで明らかとなっていくことであろう。