トレーナー

「なんだってアタシがそんな子の面倒見なきゃならないのさ?お断りだね!」

 

ラビット司ファントム・ヤマプロの申し入れに声を荒げて拒絶している。

 

ファントム「今日からヤマプロの女子部に入った訳ですし、グレート・白斗桃の、後進の育成に是非とも力添え願いたいんですよ。」

 

司「どんな奴かもわからないのに、安請け合いなんてできないね。どうせ今時の飛んだり跳ねたりする奴なんだろ?アタシが教えることなんて何一つ無いじゃないかい!」

 

ファントム「そう言わずにお願いしますよ。まあ確かに飛んだり跳ねたりですが、彼女の魅力を増すためには貴方のような戦うための技術習得が必須なのですよ。」

 

司「アタシは根性のない奴はキライだよ。最近の奴は基礎を嫌がるくせにすぐに目立つ技を教えろとか言うんだ。怪我してからじゃ遅いってのにだよ。」

 

ファントム「彼女の姿勢、身体能力は本物です。足りないのは経験と技術を高めるディテールの指導なんです。私ができる最低限の指導はしてきましたが、細やかな指導となると同じ女性であり、高い技術を持つ貴方の力がどうしても必要なのです。」

 

司「……お前がそこまでして肩入れする理由はなんだい?」

 

ファントム「私が困っている時、悩んでいる時に、手を差し伸べてくれる人は殆どいませんでした。導きが無いってのは辛く、不安なものです。そんな私でも何人かの導き手があって今があります。なので困っている人がいると放っておけないんですよね。つい助けたくなってしまう。」

 

司「随分とお人好しじゃないかい。」

 

ファントム「貴方もその1人だったじゃないですか。あと単純に良いパフォーマンスを見たいですし、成長した姿を見るのって楽しいんですよね。貴方だってそうなんじゃないですか?」

 

司「あー!もう、わかったよ。でもな、アタシはそこまでのお人好しじゃないんだよ。本当に根性あるのかはアタシが判断する。」

 

ファントム「では、今度試合組みますので、実戦で判断するってのはどうですか?」

 

司「なんだってぇ!?アタシに戦えって?いきなり実戦させるのかい?」

 

ファントム「彼女は既にデビューしてる選手ですからね。何も問題は無いでしょう。」

 

司「本当に自信があるんだねぇ……根性無さそうだったら観客の前で思いっきり潰すけど、いいんだね?」

 

ファントム「潰れたらそれまでの選手だったということです。良い選手だと思ったら、ご指導お願いしますね。」

 

司「わかったよ。楽しみにしてるよ。」

 

グレート・白斗桃の試合はラビット司との査定マッチで決定した。散々煽ったが、ここで根性を見せられないようであれば、今後の成長は無いだろう。

 

ラビット司はクラシックなスタイルを追及しているベテラン選手だ。追及するが故に魅せ技は少なく、勝ちに拘るスタイルを徹底しているため客からの評判は良くない。白斗とは正反対のスタイルと言える。

 

だが、白斗をパフォーマーからファイターへと成長させるには必要な技術である。もしかしたら司に潰されるかもしれない。しかし、前回の試合で失神させられた後、更なる参戦を要求してきた根性を今は買いたい。

 

ファントム・ヤマプロは、グレート・白斗桃の真摯な姿勢に賭けることにした。

 

youtu.be