革新と保守

僕は、とうさんに憧れてルチャドールになりたいと思ったんだ。
あの頃のとうさんは格好良かった。あんな風に強くなりたかった。

その頃の気持ちから何一つ変わってはいない。本質は一緒さ。


しかし、時代は移り行くんだ。僕らの技術は日々進歩している。

昔のような試合を望む声もあるが、それは時代に取り残されただけ。

多くの人が求めるのは、見たことのない最先端のエンターテイメント。
僕は最先端でありたい。あの頃のとうさんもそうだったはずだ。

僕は過去とは比べられない伝説になることを夢見ているのさ。

 

僕はとうさんになりたいんじゃない。

とうさんのような存在になりたいんだ。

 

 

 

あいつは何もわかっちゃいないんだ。
見た目の派手さは関係無い。本質はそこじゃないんだ。


技を受け止め、技を繰り出す。これをやり続けるんだ。

それによって対戦相手と、観客と対話しながら戦うんだ。


戦いに必要な技術はたくさんある。技はエッセンスだ。
まずは基本なんだ。俺もそうしてきた。お前もそうするべきだ。


あんなに小さかったお前が、俺に憧れてると聞いて嬉しかった。
お前を喜ばせるため、怪我に注意しながらやってきたんだ。

 

お前がルチャドールになりたいと聞いて卒倒した。

ここは観客側と選手側で見える景色は随分と違うんだ。

常に危険と隣り合わせなんだ。お前には壊れて欲しくはない。

どうしてもやっていくというなら、自分を守る力が必要なんだ。


俺は、お前を全て受け止めてやろう。

これで、お前にも全てわかるはずだ。

 

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