最強のプロレスラーを目指すためにレスリングに打ち込む、というのは良くある話だ。
レスリング時代の練習が厳しかったせいか、入団してからも基礎体力には困らなかった。
受け身の習得には苦労したが、不器用ながらも信道進は良くしてくれた。
しかし、最強のプロレスラーを目指すのだから、信道は越えるべき存在だった。
その時にできることは全てやってきた。
若さに任せて、身体能力任せの危険な飛び技を物怖じせずどんどんやった。
信道との体格差を埋めるため、シュートスタイルの団体へ出稽古に出てバチバチにやった。
ユニットを作り、肉体改造にも取り組み、ヘビー級戦線に旋風を巻き起こした。
信道に初めて勝った時は嬉しかったが、最強と認められるにはまだまだ足りないものがあった。
ヤマプロが倒産したのは良いタイミングだった。
様々な団体に上がり、反体制として常に抗争を繰り返してきた。
強さには色々な種類があることを知った。全てに対応したかった。
仲間との絆は日々深まり、大切にするものはどんどん増えていった。
そんな中、ヤマプロが復活するとの知らせを聞いた。
信道はリング上でリンチを受けていた。
試合を観る限り衰えてはいないようだったが、外国人集団にいいようにされていた。
常に体制に立ち向かって壊してきた人生だったが、憧れの存在を守りたいと思った。
そう思った時には既にリングへと走り出していた。
俺は、憧れの存在を、仲間を、団体を、守りたい。
俺は大事なものを守る最強の男になってみせる。
俺の闘争心は、何時どんな時も赤く燃えている。