覚悟

「私にそんな仔猫ちゃんを当てて大丈夫なの?」

 

レベッカ・トンプソンは怪訝そうである。

ファントム・ヤマプロはいつもの調子だ。

 

「貴方のような人を求めていたのですよ。この戦いは彼女をきっと成長させるでしょうね。」

 

「あんたってさぁ、優しいようでスパルタだよね。かなり。私との体格差を分かってる?身長は30cm違うし、体重は知らないけど倍は違うでしょうね。」

 

「まあプロレスは無差別級ですからね。」

 

「限度があるでしょう?勝ち負けじゃない。生きるか死ぬかだよ。私、手加減なんて出来ないわよ。」

 

「手加減なんてされたら困ります。彼女のためにならない。」

 

「……どうなることを望んでるの?私、壊しちゃうわよ。だから干されてるんだから。」

 

「そんな貴方を放っておけないんですよ。私は貴方を活かしてあげたい。貴方の迫力を皆に見てもらえないのは勿体無い。プロレスは事故と隣り合わせです。失敗することもあるでしょうが、それで機会を奪われるなんて残念でならないんですよ。貴方はまだ輝ける。この日本で信頼を取り戻しましょう。強いのは正義、それがリングです。」

 

「その気持ちは嬉しい。応えたいと思うよ。でもね、そのために壊れると分かってる試合しても良いのかい?」

 

「彼女はそう簡単に壊れませんよ。心も強い。信頼できるからこそ、貴方との対戦を考えたんです。得るものは大きいはずです。」

 

「……分かった。そこまで言うなら、覚悟してもらうよ。」

 

「プロレスは覚悟がなきゃできません。彼女の覚悟、図りましょう。勝てるはず無いと思う敵に立ち向かえるのか?この世界でやっていくなら相手は選べないんですよ。」

 

「……そうだね。相手は選べないんだ。私を見せつけてやるよ。」

 

プロレスの世界で戦う覚悟があるのか、今ここに試される。

 

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