「マジかよ……」
「すげぇな……」
グレート・白斗桃はピクリとも動かない。
会場は騒然となっていた。
レベッカ・トンプソンは、リングサイドのファントム・ヤマプロに怒鳴り散らしている。
「だから言ったんだ!私はちゃんと忠告したからな!」
ファントム・ヤマプロは腕を組んでいるだけである。
レベッカは大きくロープを蹴り上げた。
やがて担架が運ばれてきた。桃は担架に乗せられている。
会場の意識は担架に集中しており、静まり返っている。
その時、桃は腕を上げた。
気絶していたせいか、その腕は力無いように見える。
しかし、腕はいつまでも降ろされることは無かった。
会場からは惜しみ無い拍手が桃に送られていた。
「よく頑張ったな!」
「また頑張れよー!」
「こんなもんじゃないぞー!」
「俺達期待してるからなー!」
数々の声援に応えるかの如く、桃の拳は握られていた。
それを見たファントム・ヤマプロは口を開く。
「レベッカ。どうです?もう一戦、彼女とやりませんか?
桃の気持ちは折れちゃいない。次はもっと強くなって戻ってきます。
桃の覚悟は決まってました。貴方の覚悟はどうなのですか?」
「全く、もう一度やらせようなんてとんでもない奴だね。
私の覚悟が決まってるかだって?私は輝くって決めたんだ。
こうなったらどんな相手でも、何回でも壊してやるよ!」
意識を失っても心は折れない。
相手を壊しても心は折れない。
観客の声援が二人に力を与える。
二人の覚悟は既に決まっていた。