最後はジャーマンスープレックス一発で勝利をもぎ取った。
首に氷嚢をあてがいながら、リングを去っていく信道。
奏はマイクを取り、意気揚々と会場へと声をあげた。
「本日は皆さん、ご来場ありがとうございました!
信道さんは強かったけど、何とか勝つことができました。
これも皆さんが僕にエネルギーを送ってくれたお陰ですね。
皆が僕に力をくれるなら、僕は誰にだって負けませんよ。
例え!僕の憧れる、長谷川さんにだって!そうでしょう?
今日、ヤマプロに来て2戦目でメインを任されて、勝った。
で、さっき長谷川さん言いましたよね?次は誰だ?って。
なら次は僕なんじゃないですか?皆だって見たいでし……」
ここでテーマ曲が流れる!これは、ファントム・ヤマプロのテーマだ。
入場口からはマイクを持ったファントム・ヤマプロが現れた。
「待って下さいよ、奏くん。確かに私は貴方には期待しています。
でもね、彼は今やヤマプロの真のトップ、己の赤を打ち付ける男です。
信道を一度倒しただけで、それに相対する存在になるとは思えません。
もうひとつ、実績を見せてくださいよ。話はそれからにしましょう。」
「トップのひとりを倒したのに、まだダメだって言うんですか?
この後、トップ全員を倒さないといけないとか言いませんよね?
現実見て下さい。そんなんじゃファンが、観客が納得しませんよ?」
(そうだー!そんなに長谷川の事が大事なのかー!?)
(かなでー!そんなヒョロいオッサンやっちゃえー!)
「勿論です。次の結果次第で貴方の望むカードを組みますよ。
次は当然信道より強い、もしかしたら長谷川さんより強いかも。
彼、いや彼らとはチームで、3vs3で戦ってもらいます。
D.O.P.Eの面々と協力して、この困難を乗り越えてみなさい。
貴方は自分の若さを恨むでしょう。本物のプロレスを知るでしょう。
貴方の考える未来は幻、そう全ては!幻なのです……」
(何が幻だー!現実を見せてやれー!)
(かなでーーー!!!)
奏は観客の声にガッツポーズで応える。会場は大歓声に包まれた。
ファントム・ヤマプロの思惑通りに事は進んでいた。
しかし、何事も思い通りに行かない事も知っていた。
次回呼び寄せた連中に奏達が食われてしまわないだろうか?
どんなに心配しても、全ては選手達を信頼するしかなかった。