ヤッチー河馬の顔は真っ赤に紅潮している。
「こんなこと……誰が納得すると思ってんだ?」
「仕方無かったのです。シュプリームは……今回もリングに上がります。」
ファントム・ヤマプロは弱々しい声で答える。
「ニックはね、今やヤマプロの共同出資者なのですよ。彼はリングからの追放を一旦受け入れました。しかし、すぐに再契約を申し出ましてね。この大所帯、大会場での開催に漕ぎ着けるには今の団体だけの資金では足りません。私は経営者として断れませんでした。」
「ぞんなごどっであぶがぼ……」
印西國昭は呟く。
マッチー一角は腕を組んだまま目を閉じている。
河馬はなおも食い下がる。
「じゃあ前回の戦いはなんだったんだ?俺達は死力を尽くしたんだぞ?観客だって、試合をどう見たら良いんだ?」
「気持ちは分かりますが、それが私達の現状なのです。事情を察してくださいと言うしか……」
「ぼべだぢにべびぶごごが、がづいじあいをびべぶぼぼだげだががが、ぎゃぐぎょ。」
「本当にスミマセン。せめてマッチメイクの権利は私が持っていますので、私の一存で決めましたよ。リマッチ、4vs4のチーム戦です。どうです?前以上に激しい試合を見せて、彼らをもう一度黙らせればお客さんも納得するのでは?」
「だがよ、長谷川の大将はメインなんだろ?俺達メンバーが足りてないんだが。」
「自分に……自分に行かせてください!」
ファントム・ヤマプロの後ろに控えていた熱波猛が割って入ってきた。
「お前なぁ、お前みたいな新人がトップ外国人の相手なんて務まるかよ。」
「自分、確かに実績はありませんが根性だけは負けないッス!自分はトップの力を体感して、吸収したいッス!どうか、どうかチャンスを下さい。」
「ぎぎがねーが。やがぢでやごーげ。やでんのが?」
「はい、やらせてください!」
「印西さん……」
「ヤッヂー、がげようげ。ごいづにご。」
「話は決まったようですね。ヤマプロは実力主義です。彼らを負かすには商品価値を下げること。貴方達が勝ち続けることで黙らせてください。期待していますよ。」
控え室の熱気は最高潮に達していた。モチベーションの高さは試合の質にも直結する。
ファントム・ヤマプロには正直印西が何て言っているから聞き取れてはいなかったが、熱い魂に震えたのであった