習志野奏が初めて目にしたプロレス。
長谷川修二がリングに打ち付けた赤。
奏の胸にもそれは打ち付けられていた。
自分を活かすにはこれしかない。
それ以外に考えられなかった。
それから初めて鍛練らしい鍛練をした。
今まで鍛練などしなくても何でもできていた。
地道な鍛練より、実践する方が何倍も楽しかった。
やりたいことができた途端、その考えは変わった。
自分は、なんとしてもあの舞台に立つんだと。
そのためには太くならねば。大きくならねば。
リングでは長谷川修二が待っている。
自分の全力をぶつけられる相手が待っている。
そして、勝利を祝う声援が待っている。
しかし、追いかけても追いかけても、近付くほど見えない。
せっかく同じ団体に所属したのにすぐにいなくなってしまった。
追いかけていったのに、他に倒さねばならない相手が出てきた。
信道進を倒した。トップ倒したら資格ありでしょ。
なのにあのデカい外人達は何なの?
僕は外人なんかに興味無いんだよ。
なのに妙に強いから足踏みしちゃったよ。
次はなんだって?
荒っぽくて怪我人を何人も出してる?
ヤマプロの資金調達を一手に担ってる?
そんなこと知らないよ!どうでも良いよ!
一体いつになったら長谷川さんと戦えるんだ?
この外人倒したら、次は長谷川さんで良いでしょう?
これに勝ったらお客さんだって後押ししてくれる!
あの凄い声のファンだって大興奮に違いない!
長谷川さんこの前、信道さんに負けてたんだし。
僕にだって資格あるでしょ。僕、強いから。
試合後に今度こそ対戦をアピールしてやる。
あー、早く戦いたいなー
全力で戦うって気持ち良いんだろうなー
コスチュームだって、長谷川さんに合わせて赤にしたんだから。
あ、もしかしてコスチュームの色が被ってるからダメなのかなー
でも赤じゃなきゃ意味無いんだよね。
何せ、僕の赤を打ち付けるんだから。
あんな外人じゃ、僕の情熱は消すことはできないんだ。
あんな奴、僕の炎で燃やし尽くしてやるんだ。