フェイク

P・K・ラークは、どうやらファントム・ヤマプロの師匠らしい。

後は試合動画を観たり、雑誌で見かけた程度でしか知らない。

一応アメリカのトップ選手の1人、という事までは分かってる。

だが、長谷川修二にとって正直そこまでそそられる相手ではなかった。

 

 

観客を盛り上げるのは上手いのだろう。だが、それだけだ。

インサイドワークが得意って、つまり姑息ってことだろう。

所詮フェイクでしかない。それは俺の思う強さではない。

 

強さとは、心技体を如何に高め、それを駆使するか。

プロレスラーは全て受け切って、相手をねじ伏せる。

戦いの駆け引きはあれど、誤魔化しが効く世界じゃない。

 

そんな相手に3vs3とはいえ達が負けている。

かつて競いあったスタンリーも共闘している。

あの屈強な男が何故P・K・ラークに付いているのか。

 

金か、もしくは何らかの利益を得ているのか?

だとしてもスタンリーは人の下に付くような男ではないはず。

それだけの実力を持っているのか?そうは見えない。

 

今回のマッチメイクだって謎だ。俺は前回信道さんに負けている。

負けた人間が次もメインを張るなんてちょっと考えられない。

他に選手がいない?いや、今は選手層も厚くなってきている。

必然性は無いように思えるが……いや、やめだ。

 

俺はそんな事にまで頭の回る人間じゃない。

目の前に敵がいる。それを全力で打ちのめす。

それを実現させるために頭をフル回転させる。

当然油断なんてしない。全力で倒しにかかる。

姑息な手段は全て潰して、完璧に勝つ。

 

アメリカのショープロレスなんて知らない。

お互いの全力をぶつけ合い、誰もが納得する決着にたどり着く。

それが俺のプロレスだ。俺の赤を打ち付けるだけだ。