フフッ、フハハハハッ……
P・K・ラークは笑いを堪えることができなかった。
―
「ファントム・ヤマプロよ。俺の対戦相手なんだが、せっかくのメインイベントなんだ。どうせなら一番人気のある奴にしてくれ。」
「一番人気ですか……今だと恐らくは長谷川修二じゃないかと思いますね。それが師匠の条件ということならば、それで組みますよ。」
「そうか。誰だか全然知らんが、まあそいつでいいだろう。楽しみだなぁ。」
「しかし、長谷川修二はかなり当たりが強いです。決して楽な相手じゃないし、ショーにはつき合ってはくれませんよ。全力で倒しにかかってくるでしょう。」
「そうか。まあ何でも良い。人気があるなら、盛り上がるならそれで良いんだ。心配するな。負けたからって急に癇癪を起こして逃げ出したりなんてしねぇよ。」
―
聞こえてくるぞ。
この観客の怒号。
最高じゃないか。
プロレスを普通の格闘技か何かと勘違いしてるんだろう。
ああいう技で決着することに納得がいかないんだろう。
だがな。
そんなお前達が一番好きな選手を、こんな風に料理してやったんだ。
これでどんな文句が言えるんだ?現にこいつは敗れたじゃないか。
プロレスってのは何でもありなんだよ。何でもな。
ショーとして完成しているアメリカじゃこうはいかない。
実権を握ってる奴等の思うようなストーリーしか描かれない。
今やレスラーに本当の自由なんて存在しないのさ。
日本にはまだスポーツライクなタフネスマッチが残っている。
こういう奴等を相手にするからこそ、俺はヒートを買える。
この大観衆から批判を受ける度に俺の価値は上がるだろう。
そうすれば、金と栄光が俺の元に転がり込んでくるのさ。
仕事をしている限り、無限にな。配信も始めて分母も増える。
こんな良い商売は無いよな。負けなけりゃ良いんだ。
俺は相手も、試合も、観衆も、団体をも支配してやる。
全て俺の思う通りに操作して、動かしてやるんだよ。
誰も、俺を倒すことなんてできないんだからな。
盛り上がる演出をして、最高潮のところで掴み取るんだ。
今日の生け贄はベストだったな。
ショーマンがスポーツに勝てるわけないって空気だ。
ギリギリの展開で、反則から一瞬の丸め込みで決める。
納得のいかない声。こんなのは認められない。
次は誰だ、リベンジしてくれ、あんなのはフェイクだ。
全て俺が描いた、台本のない物語を紡ぐ大舞台。
ヤマプロのリング、俺にとって最高の舞台のようだ。
唯一全てを読み解く俺だけが本当の自由な存在だよ。
さて、今度はベルトでも用意して貰おうかな。
このリングはラーク・カンパニーを中心にして回るんだよ。