必殺技:Maison Neurose(胴絞めスリーパーホールド)
異様に大きな体格から繰り出される攻撃は、力任せに全てをねじ伏せる。
予測のできない不思議な動きをみせるが、どうやら誰かと会話しているらしい。
首を絞められ意識を失ったものは闇の世界に誘われ、気が触れてしまうと言われる。
口まで塞いだ黒革のマスクを被っているが、呼吸を制限して自身を律しているらしい。
伝説のユニット「Ampersand」の一員で「Son」の役割を担う。
最近は活動の形跡がみられない。
彼は優秀な時計職人だった。
彼が手掛けた時計は壊れることが無かったし、納期から遅れることもない。
仕事ぶりは異常なまでに精巧で、何事も時間通りに行われる。
それは生活のリズムにまで及ぶ。
起床、朝食、身支度、出勤、開店、昼食、閉店、買い出し、帰宅、夕食、読書、そして就寝。
寸分の狂いもない生活を何年続けているのかは誰も知らないが、進行が乱れたところを誰も見たことはなかった。
学生時代、面白がって彼の持つ時計に細工をした者もいたが行動に支障はなかった。
どうやら時計を見て行動しているわけではなく、自身の感覚で正確な時を把握しているらしい。
彼には最初から母がいない。無口な時計職人の父がいるだけだった。妹もいたらしいのだが、彼の記憶にはなかった。
彼が時計職人になって数年後、父は徐々に身体が衰弱していき、仕事場に立つことができなくなっていた。
それから1ヶ月後に父は家の中で首を吊った。
1人になった彼はこじんまりとした部屋に引っ越した。
安いマンションの住人達は得体の知れない雰囲気があった。
ミュージシャンの青年、家に夜な夜な客を連れ込んでいる娼婦、大酒飲みの中年、子供が7もいる大家族、常に厚化粧をしている老婆、何頭もの犬を飼う老人。
マンションは静まることを知らなかった。
一日中何処かの部屋から音が漏れているのだが、どの部屋からの音なのかは全く解らなかった。
各部屋に苦情を伝えてはいるが、誰1人騒音を認めるものはいない。
反対に謂れのない騒音の苦情を受けることさえあった。
帰宅してから家を出るまでほとんど眠ることができない。
1人になってからは更に多忙になるが、集中が続かず思うように仕事は進まない。
客に怒鳴られ、頭を下げることも多くなった。
一日中休みなく怒鳴られているような感覚。
もはや寝ている時でさえ誰かに咎められているような気がしてくる。
これ以上は正気ではいられない。
そう思った彼は大声で叫んだ。
「頼むから少しは静かにくれー!!」
今までに出した事のない大声を何度も何度も張り上げた。
何度叫んだのかは分からないが、一時間程は時間が経っていた。
気付けば誰の声も聞こえなくなっている。
彼はふと睡魔に襲われ、やっと静かな眠りについた。
翌朝、久しぶりにゆっくり眠れた彼は、優雅な時を刻みながら仕事へと出掛けていった。
数日後、マンションは取り壊されることになった。
建物は窓も壁も割られており、いつ倒壊してもおかしくはない状態だった。
次は新たなマンションが建てられるそうだ。
住人は数年前から全員行方不明らしい。
○fpwnet
https://firepro-w.com/item/detail/233096
○紹介動画
オリジナル選手紹介「Z=one」【ファイプロW】 - YouTube