この試合、ファントム・ヤマプロは脇役に徹すると決めていた。
主役は他のレスラーで、彼らが目立つことが客が盛り上がる事に直結すると想定していたのだ。
ツチグモは控えめながら職人肌のグラウンドテクニックを見せて、マニアへのアピールは期待通り十分であっただろう。
トルメンタJr.は最先端のジャベとアクロバティックな攻撃で観客を魅了したことであろう。
トルメンタSr.はいぶし銀のテクニックでオールドファンを沸かせる、はずであった。
事態が急変したのは中盤。
往年のテクニックを披露するトルメンタSr.に対し、白菜之介がヒートアップしたのか、凶器攻撃を敢行。トルメンタSr.は流血してしまう。その模様に観客席から悲鳴が上がる。
それに呼応したのか、今度は大太郎坊がヒートアップ。キャラを忘れたテクニックを披露したり、力任せに暴れ回ったりと手がつけられなくなる。
白菜之介は懲りずに、今度はトルメンタJr.に鎌攻撃を敢行。試合はどんどん荒れていく。
最後はツチグモが大太郎坊に攻め込まれ、地形を変える圧殺劇で戦いの幕を降ろした。
ゴングは鳴ったが、興奮冷めやらぬ大太郎坊がツチグモへ追撃の圧殺。あまりの衝撃にツチグモはぐったりして立ち上がれそうにない。
ファントム・ヤマプロは自分の力不足と読みの甘さを悔やんだ。
そして、この二人はもう呼ばないと心に誓うのであった。