Phantom.2 第一試合 越冬 燕一郎 vs ファントム・ヤマプロ

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越冬が気が付いた時には既に控え室だった。

 

どうやらファントムイレイサーで失神したらしい、ということは何となく理解はできた。目の前にはファントム・ヤマプロがいる。

 

ファントム「うん、意識はそろそろ大丈夫そうですね。試合、ご苦労様でした。さて、感想を聞かせて下さい。どうでした?」

 

越冬「どうって……俺の、完敗でした。」

 

ファントム「ハハハ……そんなのは当たり前ですよ。それよりどうですか?認められる要素はありましたか?」

 

越冬「……あるわけ無いですよ。失神までして……そもそも師匠に勝てるわけがないですし。」

 

ファントム「……そうですか。まあ、結果だけに拘ってるうちはまだまだってことですね。」

 

越冬「いや、師匠。失礼ながら、結果が全てですよね?勝つために俺は戦っているつもりです。負けるために戦っているわけじゃないです。」

 

ファントム「まあ、それは間違いではありません。結果が無ければチャンスは来ない。でもね、結果というのは過程があってこそのものなのです。」

 

越冬「わ、分かっていますよ!そのために毎日練習してますから……」

 

ファントム「では、クラッチ1つにどこまで拘りましたか?逃がさないためのホールドを探求してますか?効果的な打撃箇所を考えてますか?体重を乗せるための身体の使い方は?よりダメージを減らすための受け身はどうです?こういうのはね、基本は勿論教えてますけど、色々試して自分にあったポイントを見つけていくものなのです。技を自分の物にするとはそういうことです。どうですか?」

 

越冬「た、確かにそこまでは考えていませんでした……日々の反復に精一杯で……」

 

ファントム「果てしない探求の旅です。しかし、それを乗り越えてやっと熟練していくものなのです。そうやって1つ基本をマスターするとですね、不思議なことに他の技でも応用が利くものなのですよ。自分の得意なポイントを見つけるとね、その時自分に合った技が自然と導き出されるものなのです。」

 

越冬「それが俺の……」

 

ファントム「そう、得意技となるのです。貴方の投げ技も飛び技も、打撃だってまだまだでした。が、1つ1つの技に気持ちは入ってましたね。しっかり伝わってきました。だから、最後は私の必殺技で決めました。敬意を表してね。私から教える技は直接的じゃありませんが、'工夫'する事を是非覚えてもらいたいですね。さて、貴方の良いところはなんでしたか?」

 

越冬「……忍耐、ですか?」

 

ファントム「そう、工夫には必要な才能です。越冬燕の頑張りに期待してますよ。では、私は次の試合に行きますので……」

 

越冬「えっ、試合はもう終わったじゃないですか。」

 

ファントム「いや、次の試合がね。ちょっと怪我人が出てないか不安なのですよ。貴方も落ち着いたらリングのサポートに入って下さいね。では……」

 

そこまで言うと、ファントム・ヤマプロは足早にリングの方へと向かっていった。越冬はその背中を見つめるしかなかった。

 

越冬「……師匠。俺、頑張ります。いつか、その背中に追い付いて、越えてみせます!でもね、師匠やっぱこの名前ダサいですって……追い付いたら改名したいな。」

 

そう心に誓った越冬は、ファントム・ヤマプロの後を追いかけるために立ち上がった。