ハンディキャップ

○○「えっ、僕ひとりですか!?」

 

大男の大きな声が喫茶店内に響き渡る。

 

ファントム「ちょっと!声が大きいですよ。落ち着いて下さい。」

 

○○「いや、落ち着いていられませんよ。前回はサポートしてくれる人がいたから何とかなったけど、一人なんて無理ですよ。僕は身体が大きいのだけが取り柄だって言われてるんですから。」

 

ファントム「いやいや、そんな事言ってますけど前回滅茶苦茶暴れ回ってましたよ。なーに大丈夫です、貴方十分強いじゃないですか。相手はたった三人ですし。」

 

○○「えっ、三人も?いやー、無理ですって!三人も相手に出来るわけ無いじゃないですか。身体はひとつなんですよ?」

 

ファントム「えー、そうですかねぇ?ホントは四人位いけるかなと思ってたとこだったのに。それぐらい大きいですし。ハンディキャップマッチ、面白いかなと思ったんですよね。」

 

○○「身体大きいって、あっても二人分ですよ。三人と戦うならせめてもうひとり身体の大きい人を入れてくださいよ。」

 

ファントム「うーん、そんなものですかねぇ。でも相手は小さめですよ?ツチグモ妙典新、あと白菜之介。あー、試合コントロールする人がいないか。私は師弟対決に出ますし。」

 

○○「ほら、やっぱり無理ですよ。その人たち前回も見ましたけど強かったですもの。ちゃんと人数揃えられないんですか?」

 

ファントム「人数はね……なかなか揃わないんですよね。そこは申し訳無いです……あっ、じゃあうちの若手、熱波猛をつけましょう。彼は大きいですから、体格的には大体イーブンですよ!多分。」

 

○○「いや、必死だなぁ……それってお客さんは見たいんですかね?」

 

ファントム「大丈夫ですって!デカいは正義ですからね。」

 

○○「そういうもんですかねぇ」

 

ファントム「そういうもんです。ダイダラボッチは縁起物、いてくれるだけでありがたい存在なんですよ。そういうわけですから、ね?お願いします!」

 

○○「前にも言いましたが、本当はテクニカルな試合をやってみたいんですが、まあ、そこまで言うなら協力します。いつもみたいに黒塗りで良いんですよね?」

 

ファントム「そうです、そうです。では、当日よろしくお願いします!」

 

 

何とか大太郎坊を説得する事はできた。正直、試合が荒れるので使いたくない男が三人もいるのだが、興業としては客を呼ぶためにも試合数と話題性のあるキャスティングは必要なのである。試合としてはかなり危ういが、自分の試合が終わった後にセコンドに入り、何とかコントロールするしかない。ファントム・ヤマプロは未だ綱渡りの最中なのであった。

 

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