とある温泉施設。
今日もお客さんはそこそこ集まっている。
フィナーレ後の送り出しではいつものように常連が輪を作る。
「いつまでも芸が成長しないわねぇー」
「アンタ、また太ったんじゃないの?」
ハハハ、包容力はまだまだ成長期ってねェ!
でも、変わらない方が良いものだってあるだろォ?
例えば愛、とかナ!……ナンチャッテ!!(笑)
オレからの視線、ちゃんと届いてただろ?
芸はショッパイのに自分が目立つ事しか考えてない奴とか、
見えない所にまで拘り過ぎて息が詰まりそうになる奴より、
よっぽどマシだろ?今日はありがとな。また来るからさァ……
「アピールばっかしてないでちゃんと芸も魅せてよ!」
「ちょっと〜アンタ他の女にも愛想振りまいてたでしょ?」
ハハハ、だってみんなボクを観に来たんでしょ?
それにお客さんは大事だからね。サービスはさせてくれよ〜
まぁいいじゃん。本命には別のアクティビティがあるだろ?
今日もボクを支えにきてくれたんでしょ?
自分の事は棚に上げて延々ネチネチと悪態ついてる奴とか、
人の話は聞かないのに身内も客も関係無く説教する奴より、
よっぽどマシだよね?ねぇねぇ、またアレ頂戴よ……ね?
「あの……私まだ返してもらってないんですけど……」
「ねぇ、いつ私の所に来てくれる?ずっと待ってるの……」
バカなこと言ってんじゃねぇ!俺に尽くせて光栄だろ?
そもそも舞台という別世界の住人である俺と話せてるんだ。
お前は自分が特別なんだってもっと自覚しないと駄目だろ。
今日も最高の夢を観れたんだろ?
屁理屈ばかりで自分からは何の意見も行動もしない奴とか、
プライドも何も無く客に媚びへつらう事しかしない奴より、
よっぽどマシだよな?ほら、これ後でこっそり見ろよ……
この3人は超絶仲が悪い。
故にファン同士も仲が悪い。
同担も拒否なので公演時は町も荒れる。
そんな女達を惑わせて日々の糧を得る彼ら。
3人に言葉はない。笑顔もない。信頼関係もない。
ただ客に夢を魅せる、役者としての覚悟はもっている。
さて、次は何処の温泉地へ向かうやら。