J・Dことジュディット・ダルデンヌは思い込みが激しい。
それが原因で今のようなギリギリアウトのキャラクターになってしまった。
しかし、ファントム・ヤマプロが呼べる安い選手と言えば彼女しかいないのである。
「では電話口からですいませんが、日本での試合、よろしくお願いしますね。」
「ええ、分かったわ。仔猫ちゃんの事、可愛がってあげる。」
「……まあ年齢はほとんど変わらないんですが。あと貴方ね、分かってると思いますが、あの技は使っちゃダメですよ!」
「あの技って……なんのことかしら?」
「いやいやいや。貴方が最近決め技にしてるアレですよ。アレやったら絶対ヤバイことになりますから。貴方には華麗なキックという十分過ぎる武器があるんですからね。」
「華麗……それって、つまり、私の事が気になっている。そういうことかしら?」
「ん?そりゃまあ貴方に活躍の場を与えようと思ってましたから、気にはなっていますけれど。」
「うーん、なるほどね。でもね、よく考え直した方が良いんじゃないかしら?あなたの気持ちは嬉しいけど、私はそういう風には見ていないわ。」
「うん?何か条件面で納得がいかないことがあるのですか?可能な事であれば譲歩も考えますが。」
「私達には適度な距離感が必要だわ。それがお互いを高め合うことになると思うの。」
「あー、まあそうですね。私は桃を指導する立場ですから、そちらに色々と手解きをしようと思っていますよ。」
「それって、随分と失礼な話じゃない?あなたのその神経、とても理解できないわ。」
「えっ?ちょっとどういうことか理解できないのですが……」
「言葉では分からないということね。良いでしょう。そういうことなら実力行使といきましょう。あなたの大事な仔猫ちゃん、無事では済まさないから!これで私達の事もはっきりとさせましょう。」
そう言うと、J・Dは一方的に通話を切った。
女性の考えることはよく分からないが、交渉はどうやら成立したようだ。
彼女の思い込みにイマイチついていけてないファントム・ヤマプロであった。