最後はトルメンタ・ラナで、トルメンタJr.が穴倉想からスリーカウントを奪った。
それを間近で見ていた行徳は、しばし想を見つめていたが、やがてリングを降りてマイクを要求した。
「想さん。アンタこの様で何をやるって言うんだ?
あんな戦いぶりで主役になる?無理に決まってるだろ。
アンタはあの過去から止まったままだ。だから負けた。
問題と向き合わずにさ、ただ逃げているだけなんだ。
でもな、俺だって過去に縛られてるんだよ。悔しかったんだよ!
アンタは俺を縛りつける元凶でもある。俺は振り切りたいんだ。
シングルだ。
俺とシングルで戦え。お互いの全力、出し切ろうじゃないか。
口じゃない。力で示すんだ。それがファイターだろう?
俺はアンタのおかげで俺が縛られてる事に気付いたよ。
アンタだって縛られてる。解放されようぜ。お互いにな。」
想は瞬の方の肩を借り、首を押さえながら黙って聞いていたが、
全て聞き終え、会場を見回し、行徳からマイクを奪い取った。
「お前さ、随分と今日は喋るじゃないか。キャラ変か?
好き勝手言ってくれたな、おい。お前に何が分かるってんだ?
今日の敗けはな、たまたまだよ。縛られてるだ?ふざけるな。
だがまあ、俺の事を見る奴は皆縛られてるのかもしれねぇ。
全員俺の事を戦犯だと思ってるんだろう?俺を笑ってるんだろう?
どうせ俺なんて使い捨ての選手さ。お前は良いよなぁ。
止まっているのはお前らだ。問題に目を背けてるのもお前らだ。
お前らの目を覚まさせてやる義理なんて俺には無い。
だが、俺がスターダムにのしあがるには必要な戦いだな。
お前との共闘。諦めちゃいないが、まずは餌食になってもらう。
次のシングル、お前に真のプロレスを見せてやるよ。」
それを聞いた行徳は頷き、ひとりで会場を引き揚げていった。