ファントム・ヤマプロは感慨深げに会場前の客席を眺めていた。
大小様々な団体を渡り歩き、海外も各地を回った。
そして日本に戻り、また団体運営をスタートさせた。
きっかけは若者二人の訴えかけによるものだったが、もうあとには引けなくなった。
これだけの選手を抱える立場となったのだ。10年前と同じだ。
しかし、今度は潰すまい。彼らの活躍の場を保ち続けるのだ。
お客さんを呼び続けるには派手なことも続けなくてはならない。
まさか師匠が来てくれるとは思っていなかった。
話題性は抜群だ。チケットは飛ぶように売れている。
あとは話題性をどう維持するか?もう選手を増やす余裕はない。
ニック・エリオットの資金提供も果たしていつまで続くのか。
彼の興味を切らさないよう、いつまでも仕掛け続けなくてはならない。
集客以前に大きい会場を押さえたり選手のギャラを捻出したりするには、まだまだ彼の存在は必要だ。
ヤマプロを長く存続させていくにはどうしたら良いのか?
プロレスの未来を担う若者を導くにはどうしたら良いのか?
悩ましいことは沢山あるが、この試合ではそれを忘れたい。
今や人材豊富なこのリング、ジュニア戦線も充実してきた。
王道ジュニアの申し子、葛西琢磨。
シュートスタイルを極めし者、行徳恭二。
古き良きルチャドール、レイ・トルメンタSr.。
新時代のハイフライヤー、レイ・トルメンタJr.。
一点突破のリベンジャー、穴倉想。
栄光を求める曲者、穴倉瞬。
圧倒的なパワーファイター、ゴモラ。
真の忍術を追求する男、ツチグモ。
そして、インサイドワークで立ち回る私。
まだまだ増えるかもしれないが、ここから8人が入り乱れる。
これがヤマプロジュニアだという試合を作ってみせる。
彼らとの戦いを今日は楽しむのだ。
私は、まだまだプレイヤーなのだ。