Phantom.2 メインイベント 信道 進 vs パウロ・マルティネス

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リング上で熱戦を繰り広げるは信道進パウロ・マルティネスの二人。

 

そして、リング下にティム・マーティンブルーノ・ベローズの二人。

 

二人はおもむろにパウロ側のリング下に陣取ると、度々試合に介入しようとして揺さぶりをかけてくる。いつの間にか彼らは何らかの結託をしているようであるらしい。

 

信道に何度か勝利のチャンスが訪れる度に、ことごとくリング外から介入が入る。信道がチャンスを逃すと、今度はパウロが執拗な腰攻めを繰り返す。バックドロップを必殺技とする信道にとっては非常に効果的な攻撃だ。信道はかなり辛そうに腰を擦っている。

 

それでも信道は強引に、必殺のバックドロップをパウロに決めるが、フォールをするところですかさずティムがエプロンサイドに登り、邪魔に入る。そして今度はパウロが必殺のパウロスペシャルで信道の腰を捻り上げる。信道はたまらずギブアップしてしまった。

 

試合終了のゴングが鳴り響く。エースとされていた信道は、第三者の介入があったにせよ負けたことに変わりはない。試合が終わった後も暫くは動けないでいる。

 

一方のパウロは二人の協力者から勝利を称えられているところだ。そして、三人はニヤニヤと笑いながら信道に歩み寄ったかと思うと、倒れている信道を踏みつけた!何度も、何度も。

 

そんな三人に対して客席からブーイングを浴びせかけられるが、気にも留めていない様子である。そんな光景の中、会場に音楽が鳴り響く。その音楽に乗せて、花道からはスーツ姿のニック・エリオットが、通訳らしき男を連れて入場してきた。

 

ニックがリングインする頃には信道はぐったりとし、三人に羽交い締めにされているところだった。ブーイングが鳴り止まない中、ニックが通訳の男に話しかけると、通訳の男はマイクで話し始めた。

 

ニック「皆様、今日はご来場ありがとう。試合は面白かったかな?特に今のメインイベントは最高だっただろう?この団体のエースと言えども、俺達にかかればこんなもんだってことだ。お前達はこんな頼りないエースが観たくて来ているのか?違うよな?エースの強いところが観たいんだろう?ならよ、俺達を観てれば良いんだ。俺達が強さを体現してやる。これからは俺達がこのリングを盛り上げてやるぜ。毎回こんな公開処刑が観れるんだ。お前達も嬉しいだろう?お前達が喜んでくれて俺も嬉しいよ。俺達のショーが見られてお前らは幸せだ。俺達四人、これからはシュプリームと名乗るぜ。今後は至高の存在である俺達シュプリームを崇めろ!刮目せ…」

 

ここで会場に音楽が鳴り響き、それと同時に赤いタイツのレスラーが花道を走り込んでくる!

 

会場からは気付いた何人かが「長谷川修二だ!」と声を上げる。そんな中、長谷川は一直線にニックへと向かっていった。ニックの前にはパウロが立ち塞がるが、長谷川は止まることなくパウロに殴りかかっていく。殴り合いをしている二人を見て、ティムとブルーノも加勢に加わる。

 

多勢に無勢、長谷川が袋叩きとなっている中、花道からは更に三名のレスラーがリングに走り込んできた!印西國昭ヤッチー河馬マッチー一角がリングへと雪崩れ込んでいく。リング上は大勢の選手が入り乱れての大乱闘となる。お互い殴り合いを続けていたが、最終的にシュプリームの面々は次々とリング外へ追い出されてしまった。長谷川は、信道の介抱をしながら通訳の持っていたマイクを手にする。

 

長谷川「……このリングは、ヤマプロのリングは、俺の原点だ。懐かしい、安らぎさえも覚える夕陽のような赤だ。このリングで好き勝手するって言ったか?そんな事は俺が許さん。こんな一方的に俺の好敵手をボコボコにして勝って、客が納得すると思うか?このリングには俺達が、クリムゾン・クランが帰って来た!このリングを盛り上げるのは俺達だ。俺達が来たからには皆が見る赤は燃えるような情熱の赤だ。お前達が見る赤はな、お前達に迫る危険な赤だよ。このヤマプロが見る赤は日の出の赤だ!」

 

シュプリームと名乗った面々は肩を組み合いながら、リングの四人を睨みつつ花道を引き揚げていく。長谷川のマイクは通訳からしっかり聞いているようだ。その様子をファントム・ヤマプロはしっかりと見届けていた。

 

採算の面から、かつての仲間を呼ぶことに躊躇していたが、奇しくもニックのお陰で資金面は安定している。軍団抗争を見据え、手駒を新たに獲得していたファントムの策により、勝手なストーリー進行を食い止めることができた。

 

ファントム・ヤマプロが描く構想は、純粋なレスリングの試合を提供する団体である。不透明決着のない、強さを追い求めるファイトショーだ。ニック・エリオットが今までやってきたようなショーでは決してない。この軍団抗争がヤマプロの新たなファイトショーを作っていくと信じている。会場に贈られる声援を糧に次の仕込みを構想し始めるファントムであった。